Q and A―署名収集活動の留意点
2020.2.6 弁護士 大 川 隆 司
 

よくある質問

Q1.署名を集める目的はなんですか?


A1.カジノの収益によって支えられる統合型リゾート施設(IR)を横浜に誘致することに賛成(〇)か、反対(×)か、という民意を住民投票によって明らかにする条例を制定させることです。

ちなみに神奈川新聞の世論調査によれば住民投票を求める声は

「IRに反対」の人達の        85.29%

「IRに賛成」の人達の        45.52%

「どちらとも言えない」と考える人達の 60.55%

全体の               72.48%

を占めています。




Q2.住民投票を実現するためには条例制定が必要なのですか?


A2.市長にその意思があれば条例がなくても実施要綱をつくって住民投票を実施することができます。また、重要な事項については住民投票を実施する旨の包括的な住民投票条例をあらかじめ持っている自治体では、その都度この種の条例を制定する必要はありません。

しかし、横浜市には包括的な住民投票条例は無く、林市長は「説明会さえやれば住民投票は必要がない」という考え方です。なので、あらたにこの条例を制定して市長に対し住民投票の実施を義務づける必要があります。条例を制定するか否かを決めるのは横浜市会です。




Q3.市内の有権者の署名が何人以上集まったら市会は条例を制定するのですか?


A3.有権者の50分の1(約62,300人)以上の署名が集まれば、市会は私たちが請求する「条例案」を審議しなければなりません。

その「条例案」に賛成するか否かは議員の判断に委ねられますが、議会や市長のリコールに必要な数(約589,000人)に達するほどの署名が集まれば、各会派や議員はこの民意の次回選挙への反映を考慮して態度を決めざるを得ないでしょう。




Q4.署名収集の準備から条例制定までの手続きの流れを説明して下さい?


A4.以下のとおり3段階になります。

第1段階(署名の収集)

 ①「請求代表者証明書」の交付と告示(市長)

 ②受任者に対する署名簿の配布

 ③請求代表者および受任者による署名の収集······ 告示の翌日から2カ月間

 ④署名簿の提出(区選管へ)·································· 期間満了後10日以内

第2段階(選管による署名簿の審査)

 ⑤署名の審査(各区選管)············· 20日以内

 ⑥署名簿の縦覧································· 7日間

 ⑦異議の申出に対する決定············· 14日以内

 ⑧有効署名総数の告示

 ⑨請求代表者に対する署名簿の返付

第3段階(議会による条例案の審査)

 ⑩条例制定請求(いわゆる「本請求」)書の提出(市長へ)···· 署名簿返付から10日以内

 ⑪議会の招集(定例会会期中は不要)および条例案の付議······ 本請求の受理から20日以内

⑫市長の意見書提出

⑬請求代表者の意見陳述

⑭議会の審議および議決·································································· 期間の定めなし




Q5.署名収集が正式に始まった後でも受任者は追加できるのですか?


A5.署名収集期間が終了する以前であれば、いつでも受任者を追加できます。

ちなみに2013年2月以前は、受任者を追加するたびに「署名収集委任届」を首長等に提出することが義務づけられていたのですが、現在では「委任届の提出」は、初めから不要になりました。




Q6.国家公務員や地方公務員は受任者になれるのですか?


A6.国家公務員や地方公務員が受任者となった署名も、署名としては全く有効です。

そのことと、受任者となった当該公務員が当局から懲戒処分の対象にならないかということは別問題ですが、受任者となることについては、国家公務員、地方公務員とも問題ありません。

ただ、請求代表者となることについては公務員法上の制限があり、国家公務員(および教員)がリコール運動や条例制定請求運動の請求代表者となること、また地方公務員がリコール運動の請求代表者となることは制限されています。




Q7.署名収集のために用いる「署名簿」とはどんなものですか?


A7.(1)「署名簿」には次の6つの文書が一体になって綴られています(一体性を担保するために行政実例(S23.12.1三重県総務部長あて自治庁自治課長回答)では「割印をすることが望ましい」とされていますが、必要不可欠とはされていません)。

①表紙

②条例制定請求書(請求の用紙と請求代表者の連署)の写し

③条例案

④市長が発行した「代表者証明書」の写し

⑤委任状(請求代表者全員から受任者あて)の写し

⑥署名用紙

(2)署名簿の表示には、各区の名前、および区ごとの通し番号がつけられます(ただし提 出時にこの番号に欠番があっても問題にはなりません)

(3)受任者は各自1冊以上の署名簿を預って同じ区内の有権者から署名を集めることになります(委任状の受任者欄は白紙のまま配布されるので、必ず署名収集の前に各受任者が記入して下さい)。預った署名簿のホチキスは外さないで下さい。

(4)請求代表者は全区から署名を収集できるので18の区ごとの署名簿一式を預ります。




Q8.署名収集期間中に、請求代表者の一部が亡くなったり、転出または辞任した場合、従前の署名簿をそのまま使っていていいのですか?


A8.この場合は、署名簿のうち②条例制定請求書の写し、④代表者証明書の写し、⑤委任状中の該当者の記名欄(または署名欄)を削除することが必要になります。この作業には、訂正印は不要なので、各受任者がそれぞれ行なうことができますが、訂正しないまま収集した署名は「無効」となるので、気をつけましょう。

(参考行政実例)

S32.12.11 福岡県連選管委員長あて自治庁選挙局長回答

問「数人の代表者がある場合その中の一人が代表者を辞退したときは、解職請求代表証明書を訂正しその旨告示しなければならないが、その際署名収集受任者が持っている解職請求書の写及び委任状の訂正は、代表者全員の訂正印が必要であるかまたは単に削除すればたりるか。」

答「①単に削除すれば足りると解するが、削除するに当っては、請求代表者または署名収集受任者がなすべきものと解する。

②当該選挙管理委員会が解職請求代表者の辞退の届出を受理した後において、訂正されない請求代表者証明書等を添付して収集した署名は、無効と解する。」




Q9.署名は、必ず受任者と署名者が対面した上で収集しなければならないものですか?


A9.地方自治法や同法施行令に明文はないのですが、行政実例(S26.9.10東京都選管あて自治庁行政課長回答、S28.8.25福岡県選管あて同町選挙部長回答)が「郵便又は回覧の方法により署名を求めることはできない」としているため、対面による収集が原則と考えられています。

ただし対面がなくても許されることを認めた裁判例があります。

(参考判例)

S29.9.30神戸地裁判決

「署名収集の受任者が署名簿を回覧板式の方法で他人から他人へと手渡させて収集した署名であっても、反証のないかぎり、その他人は収集受任者の手足となって業務を補助しただけと認められるから、これを受任者以外の第三者の収集した無効署名とすることはできない。」

従って、受任者が署名者の意思を(メールや電話などを含め)直接確認することは必要ですが、それが確保できた場合には、他人を介して署名簿を授受することはOKと考えられます。




Q10.署名用紙の記入項目の全部を署名者が自分で記入しなければいけないのですか?


A10.(1)署名用紙には、つぎの記入項目があります。(ほかに「代筆者」が存在する場合に用いる欄もあります→Q12へ)

①署名年月日

②署名者の住所

③署名者の生年月日

④署名者の氏名

⑤署名者の印

(2)このうち①②③は、署名者本人ではなく、受任者を含む第三者が記入しても有効です。

(参考行政実例)

S29.5.14 群馬県総務部長あて自治庁行政課長回答

問「リコール署名簿中、〈署名年月日〉〈住所〉〈生年月日〉が明らかに他の人によって書かれていると認められる場合、その署名は当然無効と決定すべきであると解されるかどうか。」

答「氏名が自署であれば有効である。」




Q11.「氏名」欄の書き方は、選挙人名簿の記載と一致しないと無効になりますか


A11.自署でさえあれば、選挙人名簿の記載と違っていても差支えありません

ちなみに、行政実例や判例には、次のようなものがあります。

①誤字・脱字があっても署名簿の他の記載と総合して、何人の表示であるかを推認できる限り有効(S21.12.27各地方長官あて内務省地方局長通達、S28.6.22福島地裁判決)

②ひらがな、カタカナ、ローマ字表記も有効

(S24.1.20茨城県総務部長宛あて自治庁自治課長回答)

③点字署名も有効(地方自治法施行令92条)

④鉛筆による署名もOK(S23.20.31秋田県選管委員長あて全選事務局長回答)

⑤同一家族で「氏」を「〃」と書き「名」だけ書いても有効

(S30.2.7盛岡地裁判決、S24.1.20茨城県総務部長あて自治庁自治課長回答)

⑥氏名欄に「肩書」など余事記載があっても有効

(S21.12.27各地方長官あて内務省地方局長通牒)

⑦書き損じのため、紙を貼付し、その上に氏名を記載しても有効

(S28.6.22福島地裁判決)




Q12.代筆が認められる場合もあるのですか?


A12.地方自治法74条8号は、「心身の故障その他の事由により…署名することができないとき」には第三者による代筆を認めています。ただし請求代表者や受任者が代筆することは禁止されているので、気をつけて下さい。

また、目の見えない方は点字による署名が地方自治法施行令92条によって認められていますが、点字による自署能力がない場合は代筆が可能です(H6.7.19各都道府県法務部長あて自治省行政課長通知)

なお、代筆をした場合には署名用紙の「代筆者欄」に代筆者自身の住所・氏名・生年月日を記入し、捺印することが求められます。




Q13.署名者の捺印は実印でなければ無効ですか?


A13.実印である必要はなく、いわゆる三文判でも(姓のない)名前だけの印でも、OKです。ちなみに、行政実例や判例にはつぎのようなものがあります。なお、「サイン」は捺印のかわりにはなりません(S29.9.30神戸地裁判決)。

①拇印でも有効(S29.9.30神戸地裁判決、S37.3.20佐賀地裁判決)

②同一家族で同じ印鑑を用いても有効(S23.9.1 秋田県総部長あて自治庁自治課長回答)

③印影が不鮮明な場合でも、判読し得る限りは有効として取り扱ってよい

(S28.12.26徳島地裁判決)




Q14.「署名年月日」欄に、前の署名と同じ、という意味で「〃」と書いても有効ですか?


A14.有効とする行政実例があります(S32.1.22 三重県総務部長あて自治庁行政課長回答)

ちなみに、つぎのような行政実例もあります。

①一冊の名簿で署名年月日が前後していても有効

(S28.11.11 秋田県選管あて自治庁選挙部長回答)

②署名年月日の欄が空欄でも、前後の状況から収集期間中と認定されるときは有効(同上)




Q15.署名収集期間が終了後、署名簿はどうするのですか?


A15.前述のように提出先は各区の選挙管理委員会なので、署名簿の第一義的なとりまとめ主体は各区の会です。

ただし、署名簿を各区選管に提出するにあたっては、「市全体の署名数が法定署名数に達している」旨の書面を請求代表者が作成して添付するものとされているので、市民の会のセンターは全体を把握する必要があります。

したがって、センターと各区の会の連絡は欠かせません。




Q16.選管は、法律の規定どおり20日以内に署名簿の審査をするでしょうか?


A16.前述のとおり署名簿の審査にあたるのは区選管なので、横浜市が大きいからと言って、とくに審査機関の負担が一般市より大きいということはありません。

なお、選管は審査期間を厳守すべきものとする行政実例があります。

S32.11.9福岡県選管委員長あて自治庁選挙区長回答

問「署名簿の審査は、提出のあった日から必ず20日以内に行なわなければならないか。」

答「20日以内に審査を完了すべきものであるから、市町村の選挙管理委員会は、署名簿の提出を受けた場合においては右の期間内に審査を完了することができるようにすみやかに審査に着手しなければならない。」




Q17.市長は法律の規定どおり本請求から20日以内に市会に対し条例案を付議するでしょうか?


A17.この点について市長が法律(地方自治法74条の2、第3項)の規定を守るかどうかは、重大な政治問題で、それを実現させる力は署名者の数です。

ちなみに行政実例は、以下のとおり、「20日間」を超過してよい場合は「実質的に審議することができない等特段の事情があるとき」に限るとクギをさしています。

S48.6.6東京都総務部長あて自治省行政課長回答

問「地方自治法第74条第1項の条例の制定請求を受理したときは、同条第3項の規定により20日以内に議会を招集してこれを付議しなければならないとされているが、当該議会の議員の任期満了の期日がせまり、当該任期満了による選挙の告示がなされており、実質期に審議することができない等特段の事情があるときは、20日経過後において議会を招集し、請求にかかる条例を付議することとしてさしつかえないか。」

答「お見込のとおり。」

また、自治省・総務省職員らが共同執筆した『実務解説 直接請求制度』(H26.9.30刊)は、上記S48行政課長回答を援用してつぎのとおり述べています。

「この規定(地方自治法74条3項)が単なる訓示的規定であり当該請求の効力要件としての性格を有しないからといって、安易にこの規定に反することは許されない。しかしながら、議会議員の任期満了の期日が迫り当該任期満了による選挙の告示がなされており、実質的に審議することができない等特段の事情があるときは、20日経過後において議会を招集し、請求に係る条例を付議することとして差し支えない。」(175頁)





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